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【技術コラム】社会インフラの老朽化の課題と圧力センサー

社会インフラの老朽化は、特に発展途上国や先進国の古い都市部で深刻な問題となっています。これには道路、橋、トンネル、上下水道、鉄道、電力網などの重要なインフラが含まれ、これらの老朽化による事故や故障は大きな経済的損失や安全性へのリスクを伴います。

日本の社会インフラは、高度経済成長期に集中的に整備されたため、現在、多くの施設が老朽化の問題に直面しています。特に、道路橋やトンネル、上下水道、港湾施設などでは、建設から50年以上経過するものの割合が今後急速に増加する見込みです。この老朽化に伴い、以下のような事故が発生しています。

建築後50年以上を経過するインフラの割合(2023年3月時点)

              出所:NIKKEI インフラレジリエンスプロジェクト Infrastructure Newsより

広島県の砂防ダム決壊(2018年):西日本豪雨により、70年以上経過した砂防ダムが決壊し、大きな被害をもたらしました。

和歌山県の水管橋崩落(2021年):腐食による破断が原因で水道橋が崩落し、約6万世帯が1週間にわたり断水しました。

東北・上越・北陸新幹線の架線装置破断(2024年):38年経過した部品の破断により、約12万人の旅客輸送に影響が生じました。

国・自治体の取り組み

これらの事例は、老朽化したインフラが適切に維持管理されない場合、重大な事故や社会的影響を引き起こす可能性があることを示しています。老朽化対策として、国や自治体は以下の取り組みを進めています。

予防保全の推進:不具合が生じる前に対策を行う「予防保全」への転換が進められています。

新技術の活用:ドローンやAIによる画像診断、インフラ施設監視カメラシステムなど、最新の技術を活用した効率的な点検・監視が行われています。

人材育成と地域連携:技術系職員の育成や、自治体間の連携による効率的なインフラ維持管理が推進されています。

このインフラの老朽化に対応するため、圧力センサーをはじめとしたセンサー技術が重要な役割を果たしています。

圧力センサーとその役割

圧力センサーは、インフラの状態をリアルタイムで監視するための重要なツールです。以下のような用途で使用されます。

1. 上下水道インフラの監視

管路の劣化検知:上下水道管内の圧力変化を監視することで、漏水や亀裂の発生を早期に検知。
異常な圧力変動の検出:土壌沈下や地震などの外部要因による影響も感知可能。

2. 橋梁やトンネルの安全性評価

構造体内の応力測定:構造内部の圧力やストレスを監視し、異常な負荷やひずみを検出。
老朽化の進行評価:繰り返される荷重の影響や内部損傷をモニタリング。

3. ガス・石油パイプラインの管理

漏洩検出:管内の圧力低下をリアルタイムで検知し、迅速な対応を可能に。
運用効率の最適化:適切な圧力管理によるエネルギーの効率的利用。

4. 交通インフラの維持管理

舗装路面の荷重分布測定:道路の寿命を延ばすためのデータ収集。
トンネル内の換気管理:空気圧の監視で安全な換気を確保。

圧力センサーと人員削減の関係

圧力センサーの導入により、従来人手が必要だった点検や監視作業を自動化・省力化することが可能です。

1. インフラ監視の自動化

遠隔監視システム:圧力センサーからのデータをクラウドや専用サーバに送信し、異常をリアルタイムで検知。これにより、現場での定期的な人手による点検が不要になります。

例:上下水道管の漏水検知やガスパイプラインの圧力異常を自動的に監視。

2. 保守作業の効率化

センサーが収集したデータをAIで解析し、劣化の兆候や異常の予兆を早期に検出することがで、故障後の対応ではなく、必要最低限のタイミングでのメンテナンスが可能です。その上で、人員配置を最適化し、作業者の負担を軽減できます。

3. 危険作業の削減

橋梁やトンネル内部、老朽化した構造物など、危険が伴う現場での直接的な作業を減らし、センサーによる遠隔監視を導入することで、危険エリアの作業削減できます。

例:構造物内の圧力や応力を監視するセンサーを設置することで、作業者が劣化した構造物に近づくリスクを軽減。

4. データ管理の集中化

センサーから得られるデータをデジタル空間で再現することで、現場に行かずにインフラの状態を把握可能に。これにより、管理業務を一箇所に集約し、必要な人員を削減可能です。

社会的意義と課題、及び解決策

 上述の通り、圧力センサーを社会インフラの監視装置等に活用することは、社会的に大きな意義があります。纏めると下記の通りです。

安全性の向上:事故や災害を未然に防止。

コスト削減:予防保全により修繕費用や事故対応費用を削減。

環境保護:水やエネルギーの無駄を減らすことで環境負荷を低減。

他方、課題もあります。考えられる課題は下記の通りです。

初期投資コスト:高性能センサーやシステム導入のコストが高い。

データ管理の複雑化:大量のセンサーデータを効率的に処理・分析する仕組みが必要。

既存インフラへの適用:古い構造物にセンサーを後付けする場合の技術的困難さ。

スキルの不足:センサーやデータ解析の運用に必要な技術スキルが不足する場合がある。

既存スタッフの再配置:省人化が進むことで、従来の作業者が役割を失う可能性。

上記の課題に対する主な解決は、下記の通りです。

段階的な導入:優先順位の高いインフラからセンサーを導入し、コストや運用スキルを徐々に確立。

スタッフの再教育:データ解析やシステム運用に必要なスキルを提供するための教育プログラムを実施。

新しい役割の創出:省人化により削減される業務に代わり、データ監視や異常対応を行う新しい職種を設ける。

今後の展望

圧力センサーを含むスマートセンサー技術は、AIやビッグデータ解析と組み合わせることでさらに進化し、より効果的なインフラ管理が可能になると期待されています。また、持続可能な社会を実現するために、これらの技術が今後のインフラ設計や更新計画に組み込まれるでしょう。

少数の人員で効率的なインフラ維持管理が可能になります。また、これらの技術が進化し、AIやロボティクスと連携することで、完全自動化やさらなる効率化が期待されます。これにより、労働力不足の課題を解消しながら、安全で持続可能なインフラ運用が実現するでしょう。

オールデバイス株式会社は、圧力センサー単体はもちろん、弊社の長年にわたってお付き合いのあるお客様と協力して、これらの課題に対応してまいります。センサー単体からシステム全体まで、何でもご相談いただけますようお願い致します。

弊社は、長年の圧力センサーと電子部品業界での経験を活かし、社会の様々な課題へ資するべく、お客様・お取引先様へご提案をしております。センサーに限らず、周辺部品なども是非ご用命ください。

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