【圧力センサーベーシック#13圧力センシング統合への考察】
最近では、半導体(MEMS)圧力センシングの技術を携帯用機器やウェアラブル機器の設計に組み込む傾向が強まっています。これらの応用例における圧力センシングの選択は、センサーと機器の両方の要求仕様に強く依存し、例えば肺活量測定機器に使われている携帯用バッテリーは、継続的に20秒以上使用可能な電力の最適化を用いながらデータを記録している一方で、すぐにスイッチのオンオフをおこなう必要があり、それゆえ、必要な時に必要な電力を利用できる低電圧圧力センサーが必要となります。他の例では、携帯用HVACモニター用の圧力センサーは、携帯性と使用法の観点から、振動や位置変動に過度に影響されてしまうと、機器全体への仕様に大きな影響を与えてしまいます。
センシング技術のいろいろなタイプの中で、オールセンサーズで製造されている低電圧ベースの半導体(MEMS)圧力センサーは、信頼性の高い性能や長い有効実用寿命といった点で、携帯用機器への使用が進んでいます。低電圧駆動の半導体(MEMS)圧力センサーは、比較的低コストでかつ高機能な仕様要求にも対応しています。携帯用の機器や装置に組み込む事によって、圧力測定におけるすぐれた直線性や繰り返し性を得ることができ、また、消費電力も最適化され使用寿命も延ばすことが可能となります。これらの全ての要素が、携帯用機器への選択に重要な要素となっています。
半導体(MEMS)圧力センシングの独特の技術進歩によって、非常に多くの分野で信頼して使われるようになり、新しい市場へも展開しています。そういった新しい市場では、測定の安定性とともにより高い出力信号を得るために低電力で機能するものや、低いウォームアップドリフト・優れた姿勢特性で、さらにセンサーは内部に電気的に分離されている構造によって熱によるノイズからの保護性も大きく求められるようになっています。
携帯用機器に組み込むための適切な圧力センサーを選ぶ時には、機器の使用環境での特有な動作条件や機器の性能におよぼす潜在的な影響要素と同様に、機器の動作要求に関連するセンサー自身の性能特性を理解する事は重要です。以下の説明はこれらを考慮した概要で、オールセンサーズの低圧半導体(MEMS)圧力センサーが携帯用機器や携帯用装置の設計に組み込まれた例です。
センサーダイ設計
使用環境下における品質と性能は、センサーダイの品質に最も深く関連しています。半導体(MEMS)圧力センシングメーカーは、顧客の要求する感度レベルや性能の安定性のために可能な限り最小で最高品質のセンシングダイを作ろうと努力しています。
パッケージサイズ
例えば、肺活量測定機器に使われている携帯用バッテリーは、継続的に20秒以上利用可能な電力の最適化を常におこないながらデータを記録しています。一方ですぐにスイッチのオンオフを行う必要があり、故必要な時に電力を利用できる低電圧圧力センサーが必要となります。他の例では、携帯HVACモニター用の圧力センサーは、携帯性と使用上の観点から振動や位置変動に過度に敏感になってはならず、そうでなければ測定に大きな影響を与えてしまいます。
携帯用機器は簡単に持ち運べる事と必要に応じた機能があるという特徴があります。これは通常、性能の安定性や低圧測定の要求に繋がり、さらに、軽量で簡単に持ち運べるパッケージで確実に動作するコンパクトな圧力センサーを含む設計を必要とします。それゆえ、機器自体のスペースの制約によって、適用できるセンシング技術の選択肢が制限されます。センサーは、1つの小さなパッケージ内だけで動作するだけでなく、ノイズなどを防ぐために内部の電子機器から分離されていなければなりません。
従来の低圧セラミックセンサーが小さな機器内での要求を満たすために使用されている一方で、それらは携帯用機器には高価であり、サイズや重さについては従来のままです。同様にセンサーにとって重要な事は、センサーパッケージに負荷がかからないようにコンパクトな設計をする事であり、また出力信号の精度を考慮し、結果的に機器全体の性能に影響を与えないようにしなければなりません。これらの点から、オールセンサーズは、新たなBLV/BLVRと MLV シリーズを提供するようになりました。センサーは、感度レベル維持のため業界の最小シングル圧力ダイから設計され、それゆえコンパクトなパッケージや、パッケージへの全体への負荷を下げつつ携帯用機器設計へ簡単に導入されるようになりました。カスタムパッケージ要求もオールセンサーズのメインな役目であり、これは圧力センサーをより厳しい環境下においても機能するようになりましたた。
温度変動
動作温度による変動は、オフセット電圧や出力スパンに直接影響を与え、結果的にセンサー全体の測定安定性にも影響を与えます。携帯用機器への応用は通常0℃から50℃の適温範囲において確実に動作できる圧力センサーを必要としますが、特定の動作条件ではより広い温度範囲が必要となります。医療機器のひとつである携帯用酸素濃縮器はその例ですが、他の機器ではより広範囲 -20℃から85℃間で、つまり産業用レベルでの温度範囲があるセンサーが必要となります。これらの変動する要求範囲を満たすために、メーカーは常にユーザーが調整可能なオプション仕様や、温度補正機能のオプションなどのセンシング技術を常に追求しています。
センサー出力や機器の安定性
センサー出力感度は特定の動作電圧における信号強度に影響を与えるパラメーターです。高感度機器は通常低い電圧で信号劣化もない状態で動作します。オフセットに使われる圧力センシングの出力レベルがより高くなればなるほど、動作電圧は低くなり、それゆえそれらに対するS/N比を維持する事は前世代の機器においても見られていました。
電力・電圧供給要求とウォームアップシフト
ほとんどの携帯用機器はバッテリーで動作しており、圧力センサーの電源や電圧供給要求は伝統的に5Vですが、一般的な傾向はさらなる製品のバッテリー寿命をより向上させるため、より低い3.3V電圧となりつつあります。これらの低い電力によって、ユーザー側はセンサーを含む完成製品の測定の安定性や性能が向上しています。
温度を考えた時、ウォームアップシフトも重要な要素となります。機器のウォームアップシフトとは、ウォームアップシフト時における機器への物理的なの影響です。
電源電圧を下げるための方法の一つに、システムのバンド幅によって必要とされる電源電圧を最適化するよう調節することがあります。言い換えると、センサーの電源電圧は必要な時だけ供給するということです。これにより時間平均(デューティサイクル)におけるセンサーへの消費電力を下げ、さらにウォームアップドリフトも下げることができます。この方法は技術的に少し高度なものとなりますが、システムノイズレベルの影響を低減し素晴らしい結果をもたらしてくれます。
必要電力を管理するために、圧力センサーにおいては補正されたバージョンと補正されていないバージョンの両方で検討が可能です。補正済みバージョンを使用すると、較正済仕様、早い製品サイクル、ローコスト、デザインイン品質への対応が可能となります。未補正のバージョンでは一般的に5Vで動作するように設計されています。
携帯用機器へのセンサーの適応や機器の設計を容易にするために、さらに低い電圧1.8Vと3.3Vのセンサーが用意されています。オールセンサーズのBLVシリーズのベーシックセンサーは、1.8Vという低い動作電圧で高い出力信号を出力するように設計され、従来のセンサーと同等な出力レベルであれば電源電圧は低くなります。BLVRシリーズが要求電力の40%を使用するのに対し、このシリーズは平均電力の約10%しか使用しません。ウォームアップシフトを改善するためには、供給電圧は上昇してしまいますが、結果として全体の長期間安定性を改善します。さらに、これらのセンサーは同様のタイプの機器に対して低コスト、姿勢特性の90%減を達成します。BLVシリーズは空気や乾燥したガス、その他非腐食性、不活性な媒体にも使用される事を想定しています。出力は電源電圧に比例し、0.9から1.8V DCまで動作可能です。これによりユーザー側は、機器の製品寿命がより長くなったり、機器性能の改善や効率性・性能向上が目指せます。
ビル内空調モニタリング(HVAC)圧力トランスミッター
携帯式産業用気流測定機器は、オフィス環境や住宅の通気口を通る低い気流を測定するため使われます。一般的にこの使用例には、補正されていないミリボルト出力信号のベーシック圧力センサーが対応できますが、装置内部では生の出力信号となります。圧力センサーの使用環境によっては、高精度な仕様や環境変化感度と同様に、長期の信頼性や安定性も求められます。低いウォームアップシフトに関することも重要で、機器は電源を入れた直後から安定のある動作をする必要があります。姿勢特性はそこまで重要ではありませんが、機器自体は確実に適切な取り付け姿勢位置でセットされる必要があります。又これらのセンサーのS/N比は出来るだけ低くなる様に検討されなければならず、その様な配慮により非常に小さな圧力でも測定が可能となります。またバッテリーや電気回路動作による消費電力の低減も重要な考慮すべき項目です。
さらに低圧測定を正確におこなうためには、ユーザー側でも温度補正を行う必要があります。オールセンサーズのBLVRシリーズのベーシック圧力センサーでは、温度シフトによるオフセット誤差やウォームアップシフトは最小化され、センサーは-25から85℃の温度範囲、0から95%の湿度範囲(非結露)で正確に動作するよう設計されています。
医療用呼吸機器
医療呼吸機器には、高い精度や性能を必要とされています。これら医療機器の設計は、要求される環境において高い精度と信頼性を求められているのと同様に、頑丈でなければなりません。医療用呼吸機器が病院や外来治療、その他の臨床現場で使われるにつれ、機器は強い衝撃や振動にさらされるようになりました。これらの機器には、較正や温度補正がなされたミリボルト出力やアンプ内蔵型の圧力センサーが必要で、さらに姿勢特性や衝撃感度性も重要なこととなります。
このタイプの機器おいてさらに必要なのは、圧力センサー側の出力増幅です。圧力センサーの増幅回路は、通常ASIC(Application Specific Integrated circuit) に格納されており、圧力センサーのゲインやノイズ、補正の調節が可能になります。増幅された出力をもらえる機器側では、ゲインが悪化することなく共通のアナログ・デジタルマイクロプロセッサーへの入力とするこができます。
この例では、補正されたミリボルト出力の圧力センサーを使用することになります。出力は、ゼロ点やスパンの両方補正され、低電圧の圧力センサーでは温度に関しても補正されており、特定の動作温度範囲における正確な出力信号を確実なものにしています。
センサーの動作性能と機器全体の性能基準の両方の要求を満たすために、オールセンサーズは、MLVシリーズの低圧補正済圧力センサーを提供しています。このシリーズでは厳しい環境において使用できるよう、温度補正範囲をさらに拡大したセンサーへも対応でき、製品の設計や試作段階でも容易に取り込み使用できる様になっています。MLVシリーズの補正済みセンサーは、オールセンサーズのCoBeam2 TM技術に基づいています。従来のセンサーに比べ、機器側は低い動作電圧で駆動できかつ高い出力信号を得ることが可能です。
CoBeam2技術自体は、パッケージの圧力感度を低減し、ウォームアップシフトを改善させ結果として全体の長期間安定性を改善しています。この技術はまた、従来のシングルダイセンサーに対して、姿勢特性も改善しています。
これらの応用例は、オールセンサーズの低圧半導体(MEMS)圧力センシング技術の有効な使用例の一部です。それらに加えて、応用例としては航空工学や環境監視機器、携帯用酸素療機器などもあります。